魚群探知機を活用した藻場調査で、海洋環境保全に貢献
古野電気株式会社(本社:兵庫県西宮市、代表取締役社長執行役員:古野幸男、以下 当社)は、2025年11月2日(日)~11月5日(水)に台湾で開催された「2025年度アジア水産音響学会(Asian Fisheries Acoustic Society)」に、ゴールドスポンサーとして参加しました。本学会では、当社の魚群探知機(以下、魚探)を活用した藻場調査など、ブルーカーボンに関する取り組みを発表しました。
取り組みの背景
ブルーカーボンとは、海洋や沿岸域の生態系(藻場、海草、マングローブなど)が大気中の二酸化炭素(CO₂)を吸収し、炭素として海中に固定する仕組みを指します。これらの生態系は、地球温暖化の緩和に貢献する重要な役割を担っており、気候変動対策として世界的に注目されています。当社は、海洋・漁業分野における技術革新を通じて、持続可能な社会の実現を目指しています。そして、2050年の未来社会コンセプト「Ocean 5.0」※1の実現に向け、「海の恩恵をすべての生きるものが受け、さらに海へ恩返しする未来」を描き、海洋環境の保全にも積極的に取り組んでいます。
発表内容
今回の発表では、魚探を活用して藻場調査を行う新たなアプローチを紹介しました。従来、藻場の分布や成長状況を把握するには、ダイビングやドローン、衛星画像などの方法が用いられてきましたが、当社の強みである音響技術を活かし、より安価で効率的な調査手法を開発しています。
調査には、当社製の魚探を使用し、音響信号(200kHz)で海底上の海藻や海草のエコーを検出しました。今回対象となったのは、日本沿岸で重要なブルーカーボン生態系を構成するワカメ、ホンダワラ、コンブ、アマモなどです。取得した音響データから藻場の高さを抽出し、GPS情報と組み合わせて分布マップを作成。さらに、線形補間によって藻場の面積や体積を算出しました。
今後それらのデータを用いることで炭素固定量の推定や、Jブルークレジット制度※2の申請に活用できる可能性について紹介しました。さらに調査結果をもとに、藻場の成長に適した海域評価の可能性や、漁業を行いながらデータを収録し、藻場造成に役立てるといった漁業活動と海洋環境保全を両立させるための技術的アプローチについても提案しました。
-

システム構成図
-

舷側(げんそく)装備

藻場のエコーグラム
発表タイトル
FURUNO’s Blue Carbon Efforts
発表者
古野電気株式会社 舶用機器事業部 DX推進部 水産DX推進課 岩佐 晃
※1 未来社会コンセプト「Ocean 5.0」とは…海洋の未来や社会環境をテーマにした論文や、書籍など、様々な文献をもとに2050年に到来するであろう世界を当社が予測して描いた未来社会コンセプト。過去、現在、そしてこれからの海の未来を「Ocean 1.0」から「Ocean 5.0」の5段階に分類しており、「1.0 海の恩恵を発見」「2.0 海へ自由に航海」「3.0 人類中心で海の支配」「4.0 持続可能性の模索」と続き、2025年現在は「Ocean 4.0」の時代を生きていると定義している。
※2 Jブルークレジット制度とは…ブルーカーボンを定量化し、カーボンクレジットとして取引可能にする仕組み。
関連リンク
2025年11月18日発表(古野電気):須磨海岸沖でのブルーカーボン活動を開始
https://www.furuno.co.jp/news/general/general_category.html?itemid=1741&dispmid=1017