古野電気株式会社(本社:兵庫県西宮市、代表取締役社長執行役員:古野幸男、以下 当社)は、公益財団法人日本財団(以下 日本財団)が2020年2月より推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」(以下、MEGURI2040)※1に参画しています。この度、自動運航船として唯一新造された定期内航コンテナ船「げんぶ」の自動運航実証実験が完了し、日本海事協会による自動運航船に関する認証を1月26日付で取得、自動運航船として国土交通省の船舶検査に1月28日付で合格しました。

内航コンテナ船「げんぶ」
これを受け、2026年1月30日からの定期航路において、自動運転レベル4相当※2での一般貨物を搭載した“商用運航”を世界で初めて※3開始しました。今回の商用運航を皮切りに無人運航船の社会実装が拡大することで、船員の負担軽減や働き方改革、物流の安定化、ひいては日本の造船・海事産業の競争力強化が期待されます。
当社の取り組み
本システムは、当社が新たに開発した「避航提案ユニット(Ship Routing Unit:SRU)」を採用することにより、周囲の船舶・障害物や自船の計画経路を考慮した避航提案経路を自動計算して、衝突予測エリアとともにAPU画面(Action Planning Unit:行動計画ユニット)に表示します。さらに、立案した避航経路を進む場合の将来の他船との見合い状況予測をAPU画面で確認でき、避航判断の安全確認を支援します。また本システムは、日本海事協会の技術認証(Technology Qualification:TQ)を取得しており、第三者機関により安全性が検証された、信頼性の高い自動運航における避航判断や避航計画策定を実現しています。

当社の避航提案ユニット(SRU)を採用した避航操船支援システム
また、本船では自動運航によるブリッジ要員ゼロ(Bridge Zero:B0)を実現するため、システム全体の信頼性を高める設計を採用しています。特に、避航行動の計画を担うAPUを冗長構成とすることで、ブリッジに人がいない状態であっても、既存船と同等の安全性を確保できる仕組みとしています。これにより、仮に1台のAPUに不具合が発生した場合でも、直ちに人による操作へ切り替える必要はなく、自動運航を継続できる設計となっています。

B0運航を実現するための本船システム構成
冒頭の「げんぶ」船内ブリッジの写真は、当社が自律船向けに新たに設計・搭載した自律運航船向けの専用ブリッジコンソールを示しています。ブリッジコンソールには、着座位置(前・中・後)に応じて役割を明確に分けた操作機器配置を採用しています。前方席には自動運航時の状況監視に適した操作機器を、中間席には通常操船に必要な操作機器を、後方席には離着桟操船に適した操作機器をそれぞれ配置することで、一人当直であっても、それぞれの操船シーンに応じて無理なく操作・確認が行えるブリッジ構成としています。これらの取り組みを通じて、本ブリッジコンソールは日本海事協会のBRS1A認証※5を取得しています。
また、本船では自律航行システムを含む、船舶のDX化によって導入された多数の機器を限られた船橋内で効率的に活用するためにFURUNO SVERIGE AB(当社スウェーデン子会社)が開発したSmart Bridge System※6を国内内航船で初めて採用しました。本システムにより、航行状況や周囲の船舶情報等の各機器の画面を、前面に装備した複数のモニターに表示を操船状況に応じて自由に割り当てることが可能となります。さらに、手元のトラックボールによる一元的な操作によって、複数の機器や画面を直感的に切り替え・操作を行うことができ、操作性と視認性を大きく向上させています。これにより、自動運航時においても状況を分かりやすく把握でき、将来的な無人運航を見据えた、安全性と使いやすさを両立したブリッジ環境を実現しています。これに加え、航海用レーダーやAISなどの航海機器パッケージにも当社製品が搭載され、総合的な安全性と運航効率の向上を支援します。
当社は、船員不足や労務負担の軽減、海難事故の防止といった内航海運が抱える課題の解決に向け、今後もMEGURI2040を通じて無人運航船技術の発展と普及に貢献してまいります。
参考:定期内航コンテナ船「げんぶ」及び実証実験・船舶検査について
同船は、株式会社イコーズが管理し、鈴与海運株式会社が運航する全長約134メートル・700TEU型の内航コンテナ船で、神戸から大阪、名古屋、清水、横浜を経由して東京までの航路においてコンテナ貨物輸送に従事しています。内航海運は国内貨物輸送の約4割(重量ベース)を占める重要なインフラである一方、船員の高齢化や人手不足は深刻な課題となっています。本船はプロジェクトの目的である「物流のめぐりを良くする」観点から、無人運航船の普及を見据えて建造段階から設計、無人運航に必要なすべての機能を搭載したフラッグシップとなります。
また、船舶を航行させるためには、国が定める技術基準に適合しているかを確認する船舶検査に合格する必要があります。国土交通省では2024年6月、自動運航船に係る安全基準・検査方法などを検討する「自動運航船検討会」を設置し、2025年6月に検討結果を公表しました。「自動運航船」として航行するためにはセンサーやプランナー(避航ルートを自動で計画)等のシステムが適切に動作するか等を確認するための検査を受ける必要があり、2026年1月28日、「自動運航船」として国の船舶検査に合格したものです。
今後、本船は商用運航下で自動運航を継続し、収集した運航データは国内外の自動運航船に関するさらなるルール策定に活用してまいります。また、海運業界では船舶の安全性や品質を担保する民間団体として、「船級協会」と呼ばれる認証機関が存在します。特に保険や融資を受ける際に船級認証は大きな役割を果たします。今回、世界でも有数の船級協会である日本海事協会が世界初の自動運航船に関する船級認証「MASS」を創設し「げんぶ」がその一番船となったことは、自動運航船の社会実装に対する大きな一歩となります。
【国土交通省「自動運航船の検査方法の概要」】https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001884711.pdf
※1 無人運航船プロジェクトMEGURI2040…無人運航船の実用化を推進する技術開発を行うことで、本分野の技術開発へのさらなる機運を醸成し、その結果我が国の物流および経済・社会基盤の変革を促進するべく、当該技術開発を支援する助成制度。多種多様な国内53社でDesigning the Future of Fully Autonomous Ships Plus(以下、DFFAS+)コンソーシアムを構成し無人運航船の技術開発に取り組んでいます。
参考:https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/meguri2040
※2 自動運転レベル4相当…完全自動運航が一部可能な技術段階で、特定エリアや条件下で人の介入不要の完全自動運転のことを指します(船舶の自動運転定義は現在IMO等で議論中。便宜的に自動車の定義を流用)。
参考:https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf
※3 世界で初めて…定期貨物航路において、自動運転レベル4相当となる“定常的な実用運航”を開始する事例として世界初。
日本財団調べ(2026年1月時点)
※4 避航操船支援システム…自律航行システムにおける情報統合機能および計画策定機能を担うシステムです。自船情報および船舶用レーダー、カメラ画像認識を始めとした他船情報、環境情報を統合し、それらに基づく衝突リスクを評価する。回避が必要な場合には、弊社独自のアルゴリズムを用いた最適な避航航路を自動生成し、推進制御機器へ操船指令を出すことで、船長・航海士の操船判断を支援するとともに安全かつ効率的な航行を支援します。
※5 BRS1A認証…日本海事協会の船橋設備規則に基づく船級記号であり、船舶のブリッジ(船橋)の配置、作業環境、航海機器が、一人当直(ワンマン操船)や高度な安全管理を実現するために設けられた高い基準に適合していることを示す認定です。
※6 Smart Bridge System…操船時の様々な状況に合わせてモニター表示を自在にカスタマイズできる、閲覧性と操作性を兼ね備えたブリッジシステムです。本システムの搭載により、これまで個別で確認していた各種電子機器をネットワークで繋ぎ、その時に必要な情報を必要なタイミングでモニター上に映し出すことが可能になります。
関連リンク
2026年1月20日発表:当社開発の自律航行システム搭載の旅客船、世界初の旅客船での自動運転レベル4相当の商用運航開始
https://www.furuno.co.jp/news/general/general_category.html?itemid=1765&dispmid=1017
2024年7月18日発表:無人運航船プロジェクト MEGURI2040 世界初 複数船舶を遠隔航行支援する「陸上支援センター」が完成
https://www.furuno.co.jp/news/general/general_category.html?itemid=1525&dispmid=1017