自動運航船の設計・検証を支える新たな基盤づくりに向けて
古野電気株式会社(本社:兵庫県西宮市、代表取締役社長執行役員:古野幸男、以下 当社)は、2026年5月28日(木)に東京海洋大学越中島キャンパスで開催された「令和8年 日本船舶海洋工学会春季講演会」において、自動運航船開発のためのシミュレーション基盤に関する研究成果を発表しました。

当社の技術者が、自動運航船の設計・検証を支援するシミュレーション基盤の開発手法と有効性について紹介
背景
世界的な船員の人手不足の解消や海上輸送の安全性向上を背景に、自動運航船の実現への期待が高まっています。一方で、船舶の設計・建造は複雑化しており、開発プロセスの効率化と品質確保の両立が重要な課題となっています。こうした課題に対し、自動車や航空・宇宙分野で導入が進むモデルベース開発(MBD※1)およびモデルベース・システムズエンジニアリング(MBSE※2)が有効なアプローチとして注目されています。
東京大学の社会連携講座「海事デジタルエンジニアリング(MODE)」では、海事業界の企業・団体が連携し、次世代の海上物流を支えるシミュレーション共通基盤の構築とMBD / MBSEの研究が進められています。当社も本プロジェクトに参画し、自動運航船のシステム開発を支援するシミュレーション基盤の設計および実装に取り組んでいます。また、当社が参画している無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」の「Designing the Future of Fully Autonomous Ships Plusコンソーシアム(DFFAS+)」においても、MBSEによるシステム設計やシミュレータを活用した開発が進められており、設計と検証を一体で支える基盤の重要性が高まっています。
発表内容
本研究で構築したシミュレーション基盤では、センサーやコントローラ、船体運動など自動運航船の航行に必要な要素をモデルとして統合しており、外部のソフトウェアやハードウェアとの連携によってシステム全体の性能評価を可能にします。シミュレーション基盤自体も多数の要素が連携する複雑なシステムであるため、MBSE手法を適用しました。具体的には、システムの対象範囲を明確化した上で、海事業界のステークホルダーへの調査をもとにニーズを整理し、システム要件として定義しました。その後、システムモデリング言語であるSysML※3を用いてシステムの構造や振る舞いをモデル化し、設計とニーズの対応関係を可視化して実装へとつなげています。さらに本研究では、シミュレーション基盤の中核となる「多様なシミュレーションへの対応」というニーズに着目し、他船を避ける「避航時」のリスク評価と岸壁を離れる「離岸時」の制御性能評価という異なる2種類のシミュレーションを通じて、基盤の有効性を検証しました。
その結果、航路や衝突リスク指標などの評価結果を定量的・視覚的に出力できることを確認しました。これにより、本基盤が自動運航船の設計から検証に至る幅広い用途に対応可能であることを示しました。

シミュレーション基盤の設計モデル概観
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モデリングされた内部システム構造
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船体のシミュレーションイメージ
本取り組みにより、ステークホルダーのニーズとシステム設計の対応関係を重視したシミュレーション基盤を開発しました。今後は、設計段階にとどまっている機能の実装を進めるとともに、本シミュレーション基盤を関係者間で共有・活用することで、これまで十分に把握できていなかったニーズの発掘と設計への反映を進めていきます。
また、MODEプロジェクトの終了予定である2027年9月に向けて、関係各社と連携しながら、より実用性の高いシミュレーション基盤の構築を目指してまいります。
発表タイトル
自動運航船開発のためのシミュレーション基盤に関する研究
発表者
古野電気株式会社 舶用機器事業部 開発設計統括部 自律航行システム開発部 安田俊平
※1 MBD:製品や構成要素の機能をモデル化し、シミュレーションによって動作検証を行う開発手法
※2 MBSE:システム全体を俯瞰し、ステークホルダーのニーズを反映しながら最適な設計を行う開発手法
※3 SysML:システムの構造や振る舞い、要求、制約条件などを図やモデルで表現するためのモデリング言語
関連リンク
2022年8月8日発表(古野電気):東京大学に「海事デジタルエンジニアリング」社会連携講座を開設
https://www.furuno.co.jp/news/general/general_category.html?itemid=1190&dispmid=1017